副学長の挨拶

女性研究者の現状と大阪府立大学の課題 大阪府立大学理事(教育研究担当)・副学長 石井 実

平成27年度から、女性研究者支援事業の担当副学長を務めています。
科学技術研究調査(平成26年3月)によると、日本の女性研究者は約13万600人で、全研究者に占める割合は14.6%です。これはイギリスの37.8%(2011年)、アメリカの33.6% (2010年)などと比べると、かなり低い値です。

大阪府立大学はどうかというと、女性教員は全教員の18.0%(平成27年5月現在)と、全国平均(26.5%)を大幅に下回っています。女性教員の割合は研究分野により異なっていて、女性教員の6割近くを看護系と人文科学系が占めています。また、職階にも偏りがあり、看護学研究科では教授の8割が女性であるのに対して、工学研究科では2.4%、理学系研究科では3.2%であり、生命環境科学研究科と経済学研究科には女性の教授がいません。

一方、研究者の予備軍といえる博士後期課程(博士課程を含む)の女性比率は、全学で32.3%であり、生命環境科学研究科では27.3%、理学系研究科は14.8%、工学研究科は12.0%です(平成27年5月現在)。
このあたりの数字が、本学の理系の女性教員の割合として自然ではないかと思います。
そしてこれは、第5期科学技術基本計画(平成28年1月)の中で目標とされる、自然科学系の女性研究者の割合30%と合致するものです。

本学は、平成22年度の文部科学省・科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成事業」に採択されたのを契機に女性研究者支援センターを立ち上げ、女性教員・学生の支援に取り組んできました。
平成27年度には、文部科学省・科学技術人材育成費補助事業 「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)」に採択され、21世紀科学研究機構に「ダイバーシティ研究環境研究所」を設置しました。
そして、平成29年度から始まる中期計画に新規女性教員採用比率30%を達成するなどの目標を掲げて、女性研究者支援の取り組みを「女性研究者の研究力向上」と「上位職への両立支援」へとバージョンアップしました。

私自身は動物生態学・保全生態学が専門で、野生生物の保護や里地里山生態系の生物多様性保全などについて研究してきました。
女性研究者を絶滅危惧生物にたとえるのは少し間違っているかもしれませんが、本学では女性教員の割合が低いことには違いなく、絶滅の危機に瀕している生物と同様に、やはり環境の改善が必要だと考えています。
また、組織の成長には構成メンバーの多様性とバランスが重要であり、男性ばかりでなく女性も適材適所で配置されていなければなりません。それによって組織全体が活性化され、業績も向上していくのではないかと思います。

本学においても、すべての教職員・学生に対して、優しい「里」ともいえる環境を整えることで,女性研究者を含む多様な人材が育ち、少々のことではへこたれないバランスのよい大阪府立大学となっていくよう努力したいと思います。